鶏ジェンヌの地鶏Journey!!

第1回 福島県会津若松市の会津地鶏 2022年11月29日

はじめまして。鶏肉大好きのライター、鶏ジェンヌです!
実家が鶏肉の卸をやっているので美味しい鶏肉を食べて育ち、美味しい鶏料理の食べ歩きが好きで「鶏ジェンヌ」というあだ名がつきました。
そんな私が、日本中の美味しい地鶏に会いにいくことになりました!
消費者の皆さんに、地鶏がどのように育てられ、どのように美味しく食べられるのかをご紹介する連載です。第一回は福島県会津若松市の会津地鶏です。

【地鶏、地鶏ヒナ】長めの尾羽が特長で、美しい羽根の会津地鶏。約120日かけて大切に育てられています

500年以上の歴史があると言われる会津地鶏。
一目見た瞬間に思わず「きれい!」と声を上げてしまいました。
「もともとは観賞用で、ペットとして飼われていたそうです。会津の伝統芸能である『会津彼岸獅子』の獅子頭には、会津地鶏の羽根が使われています。尾羽の長さから、オナガドリにも近いのかもしれません。美しいですよね」
会津養鶏協会の副会長で、㈱会津地鶏ネットの代表取締役社長である酒井さんにきれいですねと言うと、笑顔で頷いてくれました。

【酒井氏】会津養鶏協会の酒井副会長。ご自身でも会津地鶏を育てています。

会津地鶏は、平家の落人が愛玩用に会津に持ち込んだのがはじまりと言われています。 当時日本では鶏はペットとして飼われており、肉や卵を食べるために育てることはありませんでした。
国内で養鶏が行われるようになってからも、会津地域では養鶏が盛んではなかったこともあり、他の種類の鶏と交わることがなく、純粋種が維持されてきたと考えられています。
そんな会津地鶏ですが、近代になってからは飼育する方も減り、一時期は絶滅寸前まで減ってしまいました。
昭和62年に福島県の養鶏試験場(現・福島県農業総合センター畜産研究所養鶏科)が調査したところ、会津の固有種ということが分かったため原種として守ることにしたのだそうです。
では、観賞用であった会津地鶏が味自慢の地鶏として飼育されるようになったのはいつからなのでしょうか?
「平成4年度から生産を開始しました。もともとの会津地鶏を私たちは『純系会津地鶏』と呼んでいますが、純系会津地鶏は体が小さく、肉があまり取れないので、県の養鶏試験場で体が大きくなるように改良して今の会津地鶏になりました」

私たちが食べる会津地鶏は、純系会津地鶏から掛け合わせた「大型会津地鶏」に、肉用に飼育される「ロードアイランドレッド」という品種を掛け合わせたものだそうです。
どのように育てられているのか、どうして会津地鶏が美味しいのか、そのヒミツを酒井さんに伺いました。

―会津地鶏の美味しさのヒミツ―

私たちが普段食べる鶏肉は、一般的に卵から孵ってから45日~48日程度の飼育で出荷されています。栄養たっぷりの餌を沢山食べるので成長がとても早く、細やかな管理で安定した生産を行っているのですが、会津地鶏は出荷までに約120日程度かけてじっくり育てられています。
この「じっくり」が美味しさのヒミツ!広い鶏舎で伸び伸びと餌を食べたり動き回ったりしながら、お肉に旨味を溜めて成長していくそうです。
酒井さんが社長を務める㈱会津地鶏ネットでは肉用の会津地鶏を生産しており、生産農場は猪苗代湖の近く、白虎隊ゆかりの古戦場跡にあります。

【養鶏場からの風景】猪苗代湖の近く、磐梯山を美しく望む場所で会津地鶏はのびのびと育てられています。

鶏は一般的に暑さに弱いのですが、夏も涼しいこの場所では、鶏が夏バテしないのだそう。
「冬の寒さは厳しいので、冬場は鶏が冷えないように温度管理をしっかり行うことが大切。鶏が暖かく快適に過ごせるようにしています」
4ヶ月もの間、しっかりと旨味を溜めこんだ会津地鶏は、赤味が濃くて適度な歯ごたえ。コクや旨味のもとであるイノシン酸を豊富に含んだ美味しい鶏肉になります。

―会津地鶏を会津の名産に!―

肉用会津地鶏は現在、3ケ所の農場で25,000羽ほど飼育されています。
福島県内の飲食店で食べられるほか、加工品の販売や水炊きセットの通販なども行っています。
生ハムや炭火焼きといった加工品は道の駅猪苗代でも販売されていて、お土産にと手に取る観光客も多く見られました。
酒井さんは、これからもっと会津地鶏を有名にしていきたいと言います。

「名古屋コーチンなどに比べたら会津地鶏の知名度はまだまだ。会津は商売下手なところがあるのか(笑)野菜など名産品もたくさんあるのにナンバーワンというものがないんですよね。だから名物となる商品を開発して、日本中にどんどんPRしていきたいと思っています」

―素材の美味しさをしっかり味わえる名店で会津地鶏を!―

酒井さんからお話を伺った後は、会津若松市の市街地へ向かいます。
会津地鶏を取り扱う飲食店さんで構成された「あいづ地鶏味の会」の一員である「酒菜 天味」さんへお邪魔しました。 天味は、店主の小田切さんの「会津の美味しさを楽しむ」という想いを込めたお店。
小田切さんがご自身で味を確かめて契約した農家から仕入れた野菜など、地のもの、旬のものにこだわっていて、素材の美味しさを味わえるお料理が人気です。

【店舗外観】会津若松駅から車で6分程度のところにある、酒菜 天味。「あいづ地鶏味の会」の会員で、会津の旬の食材と会津地鶏の美味しい料理と地酒で人気のお店です。

会津地鶏を使ったメニューは、シンプルな「塩焼き」や大きな椎茸を使った「つくね」といった定番メニューだけでなく「会津地鶏と旬野菜のアヒージョ」という、オリジナル料理もあります。
小田切さんに会津地鶏の魅力を伺うと「鶏肉特有のくさみがなく、旨味がしっかりしているところですね。地鶏そのものの味を楽しめるように、凝った味付けは不要だと思っています」
とのこと。今回は「会津地鶏の塩焼き」と「椎茸のつくね焼き」、そして「会津地鶏と旬野菜のアヒージョ」をいただきました。 「会津地鶏の塩焼き」は皮がパリッとしていて、弾力ある地鶏ならではの歯ごたえも感じられます。
噛みしめた時にじゅわっと旨味が口の中に溢れて、思わず「美味しい!」と声に出てしまうほど。シンプルに塩だけの味付けだからこそ、脂の甘さやお肉のコクもはっきりわかります。

【塩焼き】シンプルな調理だからこそ、会津地鶏そのものの旨味をしっかりと味わえます。

次にいただいた「椎茸のつくね焼き」は、契約農家さんから仕入れた肉厚の椎茸の上に乗っていました。タレの味はそこまで強くなく、食べ応えも十分で、もうひとつ!とおかわりしたくなる美味しさです。

【つくね】肉厚の椎茸と、旨味たっぷりの会津地鶏のつくねは最高の組み合わせです。

最後に登場したのは「会津地鶏と旬野菜のアヒージョ」。

【アヒージョ】お客様との会話から生まれた天味さんならではの一品。契約農家さんから仕入れる旬野菜と会津地鶏を菜種油で煮込んだ、女性に大人気のメニューです。

「これはお客さんのアイデアをヒントにして生まれたメニューなんです」
と、小田切さん。
とても美味しい菜種油をいただいて、この油をどんな料理に使おうかなと考えていた時に「アヒージョはどう?」とお客さんが言ったのがきっかけだそうです。
会津地鶏と、小田切さんがこだわって仕入れている旬の野菜で作られたアヒージョは、素材の味が活きていてとても美味しいです。また、一般的なアヒージョはオリーブオイルを使いますが、菜種油で作ると軽くてあっさりと食べやすくなるようで、具材の旨味が溶け込んだオイルをバゲットに付けるといくらでも食べられそうでした。


会津地鶏は会津の大地に根差した歴史ある地鶏を改良した、美しさと美味しさを兼ね備えた地鶏でした。
会津の厳しい寒さに負けないように大切に育てられた鶏は、歯ごたえがあってコクと旨味たっぷりの美味しさです!